『自分に新たな「肩書き」を…』
ジョブ・チェンジング…
仕事のモチベーションを高めるために、
組織心理学の世界で考案された技法です。
やり方は非常にシンプルで、
・問題のタスクに対して、自分に新たな「肩書き」をつける
これだけです。子供だましのように思われたかもしれませんが、実はこれがバカにできない効果を持っています。
アメリカの病院を対象にしたある研究では、仕事のやる気に欠ける清掃スタッフへ、次の肩書きを与えてました。
「清掃の仕事は治療のプロセスのひとつであり、あなたたちは『病院のアンバサダー』なのです」
すると、スタッフのモチベーションは一夜にして激変。みんな以前より清掃に集中して取り組み始め、かつては夜中まで汚れていた床やトイレが、夕方にはピカピカになったのです。
ジョブ・チェンジングの効果を調べたレビュー論文の中で、イエール大学の研究チームはこうコメントしています。
「新たな『肩書き』は、たんにマインドセットを変える以上の効果を持っている。新たな肩書きによって仕事へのアプローチが変わり、結果として集中力にも変化が出るからだ」
自分のことを「病院のアンバサダー」だととらえ直せば、院内の清掃は「ただの義務」から「患者を癒す治療のひとつ」に変わるでしょう。そのおかげでスタッフに大きな責任感が生まれ、仕事への集中力も上がったわけです。
ただし「ジョブ・チェンジング」を行う際は、好きな肩書きをなんでも名乗っていいわけでなく、実態に即したものをつけなければならない点に注意してください。イラストが描けないのにイラストレーターを名乗っても無意味なように、仕事を集中してこなせないのに「ハイパフォーマー」を標榜しても獣が納得するはずはないでしょう。
先の実験に効果があったのは、あくまで清掃員の仕事に別の角度から光を当てたからであり、「掃除の仕事は治療のプロセスのひとつ」との言葉にウソはありません。正しく肩書きをつけるには、事実ベースを心がける必要があります。
ヤバい集中力 SB Creative
鈴木祐著
「肩書き」は横文字のほうがカッコいいかなぁ。